その名前を聞き、ポンティウス・ピラトゥスは高齢の疲れや足の悪さにもかかわらず機敏に輿を降りた。そしてアエリウス・ラミアをしっかりと抱きしめた。
「まったく、ふたたび会えるとは。ああ! 昔のことを思い出すよ、あのころはシリア地方でユダヤの総督をしていた。はじめて会ってから三十年か。追放先のチェザレアだったな。少しは気休めになったのなら嬉しかったよ。するとラミア、親切にもあんたはエルサレムについてきてくれた。ユダヤ人に嫌悪と辛酸をなめさせられたエルサレムにだ。十年のあいだ客であり友人だった。ふたりとも都の話をし、慰め合ったものだ。あんたは身の不運を話し、わたしは我が身の重圧を話したんだったな」
ラミアはふたたび抱擁を交した。
「ポンティウス、まだあります。ヘロデ・アンティパス王に授かった信用を、私のために計らってくれたし、気前よく財布の口を開けてくれたではないですか」